2nd. TONDEMO

第2回

衝突2秒前まで相手方車両に気づかなくても過失なし!?

2021年 7月28日 判決

担当裁判官:
本間健裕裁判官(裁判長)
岡口基一裁判官(主任)
工藤哲郎裁判官

仙台高等裁判所・第3民事部
令和2年(ネ)第366号・損害賠償、求償金請求控訴事件

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第2回 事案の概要

  • 1.

     原告X1は、友人である被告Y1の車に同乗していたところ、交差点でY1が赤信号無視をして直進しまったため、Y1が運転する乗用車が、交差する道路を青信号で直進していたY2が運転するトレーラーと衝突し、X1は高次脳機能障害を含む重傷を負いました。

     X1とその両親であるX2及びX3は、Y1、Y2、そしてY2の雇用主であるY3を被告として損害賠償請求訴訟を提起しました。

  • 2.

     本件では、Y1が任意保険に加入していなかったため、Y2及びY3の過失責任の有無が中心的な争点となりました。

     この点、Y3は、Y2が運転するトレーラーの運行供用者なので、Y2に過失がないことを立証しなければ、損害賠償責任を免れることはできません(自賠法3条)。

     本件事故が発生した交差点は、周りを田畑で囲まれた極めて見通しがよい交差点であるところ、本件が発生したのは午後7時30分ころの夜間で、Y1が運転する車両はヘッドライトをつけていたため、その発見は何十秒も前の地点からも極めて容易でした。であるにもかかわらず、Y2は衝突までわずか2秒手前の地点までY1が運転する車両に気づかなかったと供述していました。

     なお、たとえ相手方車両が赤信号を無視した状況でも、容易に信号違反者を発見して衝突を回避し得る場合などには、信号に従っていても過失が認められることは一般に承認されています(別冊判例タイムズ38・207頁など)。

     このように、Y2がY1運転車両の発見が遅れたことは明らかだったことから、本件の1審判決は、「Y2は、通常の前方に対する注意を払っていれば、Y2がY1車両に気づいた地点付近よりも手前の地点で、Y1車が信号を無視して本件交差点に進入してくることを予見できたと認めるのが相当である。」と判示し、Y3の運行供用者責任を肯定しました。

     この1審判決にY3が不服だったため、Y3は控訴しました。(なお、X1~3も、X1の後遺障害等級認定等に不服だったため、控訴しました。)

  • 3.

     控訴審である仙台高裁第3民事部は、判決で次のように述べて、Y3の運行供用者責任を否定しました。

     「本件事故は、本件交差点付近が暗い夜間に発生したものである上、周囲には、信号、街灯、民家の灯りなど様々な灯りがあったこと(戊22-9頁)、夜間時の自動車の運転者の視野角度は限られ、予見範囲はヘッドライトが照射されている範囲に限定されると考えられるという知見があること(戊22,23)からすると」、「Y2が通常の前方に対する注意を払っていれば、Y1運転車両を発見した地点よりも手前の地点でY1運転車両の存在を認識することができたとまでは認められないというべきである。」

  • 4.

     この判決が述べているのは、田んぼの真ん中の極めて見通しのよい交差点で、夜間、ヘッドライトをつけて進入してきた相手方車両は、「信号、街灯、民家の灯りなど様々な灯り」に紛れて発見することが困難であり、また、自車のヘッドライトに照らされている範囲に入ってこなければ、たとえ相手方車両がヘッドライトをつけていても発見は困難であり、衝突の2秒前まで相手方車両を発見することは不可能ということです。

     Y2運転車両は時速50キロで走行していたため、2秒手前だとすでに制動距離を過ぎているため、そこからブレーキをかけても必ず衝突することになります。つまり、この仙台高裁判決によると、ブレーキをかけても絶対に間に合わない地点まで交差点に近づかないと相手方車両に気づくことが不可能ということになります。

     このような判示は明らかに常識外れなので、X1~3は最高裁に上告(上告受理申立)しました。

総合トンデモ判決度 Ave. Tondemo Ratings 4.75!!!
4.5/5
COMMENTS

第2回 会員コメント

仙台弁護士会所属の弁護士有志による考察

Asset 9@500x
トンデモ判決度
5/5

A会員

 この判決の理屈だと、たとえば信号機の設置されていない田舎道の交差点でも、2秒手前まで相手方車両を発見することができないことになるので、時速50キロ程度で交差点に進入した車同士は必ず衝突することになってしまい、危なくて誰も夜間に運転することはできなくなると思います。極めて見通しのよい交差点でも、衝突2秒手前までヘッドライトをつけた相手方車両を発見することが困難などと述べるこの判決は完全に常識を無視したウルトラトンデモ判決だと思います。(本当であれば、★6か7をつけるべきところです。)

 なお、この判決は、X1の後遺障害等級の認定についても、「X1は、現在の勤務状況については、金銭トラブルがあった友人に居場所を知られたくないとの理由で、補助参加人からの再三の釈明を受けても、明らかにせず、5級ないし7級に該当する上で障害となる疑問を払しょくできていない。」などと、述べていますが、記録のどこを見てもこのような事実は存在しません。このように、まったく存在しない事実を述べて、不当に低い後遺障害等級を認定するなど、何が何でもY2及びY3の保険会社を勝たせようという姿勢に徹しています。この判決の主任裁判官は、犯罪被害者に対する心ないツイート等を理由に国会の弾劾裁判を受けている岡口基一裁判官ですが、被害者の心情に寄り添い、その苦痛を理解するという態度に欠ける点は、この判決にも如実に表れていると思います。

 なお、このような保険会社びいきの判決が頻発されることにより、保険会社がなかなか和解に応じないという状況が加速されていると思います。

Asset 12@500x
トンデモ判決度
5/5

B会員

 この判決は,「田舎の田んぼ道のど真ん中の,何もない交差点で,ヘッドライトを付けて走行している自動車を『自動車』であると気付けない」という内容ですが,いくら何でもあり得ないと思います。小学生に聞いても「おかしい」と思うのではないでしょうか。これが,「真っ暗闇の中を徘徊していた認知症のお年寄りをひいてしまった」のであればわかりますが。

Asset 13@500x
トンデモ判決度
5/5

C会員

 結論が常識に全く整合しないことは無論、本件交差点付近が暗い夜間であることは認めつつも、周囲に信号、街灯、民家の灯りなど様々な灯りがあったとし、前提となる事実認定が昧であり、又、夜間時の自動車の運転者の視野角度が限られ、予見範囲がヘッドライトが照射されている範囲に限定されると考えられるという知見があるとの前提を取っておきながら、周囲の灯りの存在は運転者にも認識できるかのような認定も行っており、その結論に至る過程においても自らの論理が全く破綻している、ウルトラトンデモ判決だと思います。

Asset 2@500x
トンデモ判決度
4/5

D会員

 この判決は、「信号、街灯、民家の灯りなど様々な灯り」と走行している自動車のヘッドライトを混同する可能性があることを前提に判示をしていますが,このような誤認が通常ありえないことは,自動車を運転する人であればわかるのではないでしょうか。その点で,社会常識からは外れた判示と思います。
 他方で,本件は「Y1運転車両が赤信号で進入」しているところ,「特別の事情のない限り,信号を無視して交差点に進入してくる車両があることまでを予想する」ところまでは求められない,という,通常とは異なる状況下での判断ですので,トンデモ度は★4つになります。