1st. TONDEMO

第1回

使途不明金の使途は原告が証明せよ!?

2020年 2月12日 判決

担当裁判官:梶浦義嗣裁判官

仙台地方裁判所・気仙沼支部 平成30年(ワ)第22号・不当利得返還請求事件

仙台地方裁判所・気仙沼支部 平成30年(ワ)第27号・貸金請求事件

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第1回 事案の概要

 認知症で施設に入所していた原告の母の預貯金につき、原告の母の生前に預貯金等を管理していた親族により、約2300万円の預貯金が引き出され、使途不明になっているため、原告が、その親族を被告として、使途不明の預貯金の返還を求めた事案で、被告は、預貯金を引き出したことを認めつつ、原告の母の意向により、被告やその他の親族に贈与がなされたと主張しました。

 このような預貯金の使い込みの事案では、通常、原告は、預貯金がどのように使われたかはあずかり知らないので、被告が預貯金を正当に支出したことを立証しなければならないとされるのが一般的です。しかし、この判決では、被告が主張する預貯金の使途が虚偽であることを原告が立証しなければならないとして、原告の請求を棄却しました。

 この判決の控訴審では、預貯金の使途については被告側に立証責任があることを前提とした和解が成立しました。

総合トンデモ判決度 Ave. Tondemo Ratings 4.25!!!
4/5
COMMENTS

第1回 会員コメント

仙台弁護士会所属の弁護士有志による考察

Asset 9@500x
トンデモ判決度
5/5

A会員

 この裁判では、第1審でも、使途不明金の使途についての立証責任は被告にあることを述べる文献が証拠として提出されたにもかかわらず、担当裁判官はあえてそのような文献を無視して、立証責任が原告にあると判断しており、トンデモ判決度はかなり高いと考えられます。

Asset 12@500x
トンデモ判決度
5/5

B会員

 この判決の論理によると、原告側は、「被告が主張する預貯金の使途が真実ではないこと」を立証しなければならないことになり、「ないことの証明」、いわゆる「悪魔の証明」をしなければならないことになります。原告側に「不可能」を強いるこの判決のトンデモ度は極めて高いと思います。

Asset 13@500x
トンデモ判決度
4/5

C会員

 行為者ではない者に行為者が正当にその行為を行わなかったことの立証を求める、まさに「悪魔の証明」を要求するもので,近代裁判においてはあり得ない,トンデモ判決だと思います。

Asset 2@500x
トンデモ判決度
3/5

D会員

  • 1.

    委任関係について

     裁判所は,亡Aが施設に入所する際に,被告に対し,預貯金通帳及び印鑑を委託して,その管理を託したものと認定している(判決14頁)
    そうすると,亡Aと被告との間には,預貯金の管理等に関する準委任契約(民法656条)が成立しているものと考えられる。

  • 2.

    支出に関する認定について

     その上で,本判決は,別紙1に「◎」の記載のあるものについては,本件メモに記載はなく,被告の主張からすれば,亡Aや親戚や知人のうち東日本大震災で被災したものに対して,援助をしており,その交付の日時・相手方及び金額については覚えていない旨を認定している(判決16頁)。
     しかし,本判決は,上記認定に引き続いて「支援金等については,本件メモに記載されているものと記載されていないものがあるということができる」が,「預貯金の管理全てについて本件メモに記載していたものではないことがうかがわれ」,「亡Aの預貯金の管理体制やその出入金履歴,その記録の有無等を総合すると,被告の上記供述を虚偽のものと断ずることはできず,別紙1に「◎」の記載のあるものについて,被告に不当利得等が成立するものとは認めるに足りない。としている。

  • 3.

    本判決の問題点について

     本判決は,先に亡Aと被告との間で準委任契約の成立を認定しているところ,受任者は委任者のために「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う(民法644条)」のであるから,上記のような性質上,領収証などが残りにくい支出については殊更にこれを記録に残し,委任の本旨に従って,亡Aの財産である預貯金を適切に管理する必要があった。
     したがって,このような性質上領収証などが残りにくい支出については,亡Aとしてもこれを記録することを望むと言えるのであって,仮に記録上支出に関する記載がないのであれば,この支出はなかったか,あってもその支出を受任者である被告が立証すべきであると考えられる。
     この点について,本判決は「預貯金の管理全てについて本件メモに記載していたものではない」とし,記録のないものも存在したとして,不当利得の成立を否定している。
     しかし,仮にも一個人の財産の預託を受け,準委任関係上の事務処理を行っていたことからすれば,それを適切に記録することはいわば当然であり,本件においても記載がないものを「あった」ものすることは,経験則に反すると言わなければならない。
     さらに言えば,本判決が指摘する「記載のなかったもの」は10万円の入金であって(判決17頁),親戚や知人らへの支援金の「数十万から数百万」とは,金銭的にも内容的にも,同列に論じられるものではない。

  • 4.

    結語

     本件では,このような「他にも書いてないものがあった」から,重要な支 出について記載していないことを正当化することは,判決の推認過程からみても極めて問題がある。